4月20日(木) 15:30 -- 17:30 森岡 達史(大阪大学大学院理学研究科) ``影の領域における弾性波'' <研究発表要旨> ある種の物体に力を加えると変形するが、力を加えるのをやめるともとにもどる。 このような性質を弾性という。弾性をもつ物体を弾性体とよぶ。弾性波とは、弾性体を 伝わる波のことをいう。波の媒質のもとの状態からのずれを変位とよぶ。変位と進行 方向とが互いに平行な波を縦波といい、垂直な波を横波という。弾性体が等方性をも つ場合、そこを伝わる弾性波は一般に縦波と横波の重合わせになっている。 縦波と横波について、それぞれの進行方向に対する変位の自由度を考えてみる。 縦波の変位は進行方向に対して一意的に定まるので、変位の自由度は無いといえる。 一方、横波の変位は進行方向に対して2次元の自由度を持っている。そこで、横波に ついては、偏りが問題になる。ここで、波が偏りをもつとは、その変位が特定方向に 集中していることをいう。 一般に波が障害物に当たると反射が起こる。弾性波の場合、入射波が縦波または横波 のみであっても、一般には反射波として縦波と横波の両方が現れる。このように、波 の種類が変わる現象を Mode の変換とよぶ。波が障害物の後ろ側に回りこむ現象を回 折という。弾性波の場合、凸な障害物に対してある角度から横波が斜めに入射すると、 Mode の変換により縦波が障害物に接する方向に現れて回折が起こる。このとき、障害 物の境界を伝わる縦波にMode の変換が起こって、障害物の境界から弾性体の内部に 向かって伝播する横波が現れる。障害物の境界を伝わる弾性波を単に表面波とよぶ ことにする。今の場合、回折により現われた表面波は、縦波と横波の重合わせにな っている。この現象において、障害物に入射する横波が偏っていると仮定する。この とき、結論として、回折により現れる表面波が偏っていること、その偏りの方向は、 入射波の偏りの方向に依存して定まることがわかった。詳しくは、講演のときに説明 する。