6月26日(木) 15:30 -- 17:00 東森 信就 (京都大学大学院情報学研究科) ``A Conditional Stability Estimate for Identifying a Cavity by an Elastostatic Measurement'' <研究発表要旨> 弾性体内部の欠陥を非破壊的に同定する手法を想定した領域同定逆問題を設定し, ある先験情報の下でこの逆問題の解の安定性を議論した.さらに,その証明に用 いられる弾性体方程式の解の正則性の評価,Carleman評価を用いた初期値問題の 条件安定性,三円定理型の評価の紹介についても論じる. 本研究で考察する逆問題は,等方的弾性体内部に未知の空洞や亀裂等の欠陥が 生じる場合に,弾性体の変位場の振る舞いからこの未知欠陥を同定する手法を定 式化したものである.具体的には,3次元弾性体の内部に球形に近い形状の空洞欠 陥が唯一つ存在し,この弾性体の表面を領域の既知境界と考える.このとき,未知 境界を同定するためのデータとして弾性体を一度だけ静的に変形させた際に得られ る既知境界上での変位および応力の厳密な観測値が与えられたものとして問題設 定が行なわれている. 得られた主結果は,一つの変位ベクトル場の既知境界上のデータから未知境界 を同定する領域同定逆問題の解が,ある先験情報が満される範囲で連続(安定)で あることを示し,さらにその連続性(安定性)の度合いを評価も行うものである.こ こで取り上げたLam\'{e}方程式系の問題に対する条件安定性は,この研究が初めて であり,この評価はこれまでに単独の楕円型方程式に対して得られたものと同程度 の鋭い評価になっている.