7月3日(木) 15:00 -- 16:30 藤原 宏志 (京都大学情報学研究科) ``数値的に不安定な問題に対する多倍長精度並列 LU 分解'' <研究発表要旨> 逆問題など非適切問題の数値的取り扱いにおいては、その数値的不安定性と呼ば れる種々の計算誤差の増大が問題となる。これに対し、第一種積分方程式で記述 されるような問題では、高精度離散化手法と多倍長計算の併用の有効性が近年 指摘されている。ここでは積分方程式の離散化やスペクトル法による微分方程式 の離散化は、密行列の連立一次方程式に帰着されるため、大規模問題の多倍長計 算の実行においては計算時間およびメモリ量が問題となる。 本研究では分散メモリ並列計算環境を対象とし、多倍長計算ライブラリexflib をもちいた多倍長並列 LU 分解の実装を行なった。この結果、一般的な PC アーキ テクチャによる NUMA (non-uniform memory architecture) クラスタ上で並列化 効率が 1 を越えるスーパーリニアを実現した。また、マルチコアおよびマルチプ ロセサ環境においても高い並列化効率を実現している。本ライブラリは FORTRAN90 および C++ 言語で利用可能であり、データ構造や並列アルゴリズムをユーザから 隠蔽するインターフェースを有する。 講演では近年の並列計算アーキテクチャに即し、exflib および LU 分解の 並列処理について述べ、さらに非適切問題への応用についても述べる予定である。