6月5日(木) 15:00 -- 16:30 坂上 貴之 (京都大学理学研究科数学教室) ``オイラー方程式の散逸的弱解と点渦力学'' <研究発表要旨> コルモゴロフによる乱流の統計理論における重要な仮定の一つにエネル ギー散逸率の粘性ゼロ極限における非消散というものがある.もし乱流が Navier-Stokes方程式の解のアンサンブル平均によって記述されていると すれば,その粘性ゼロ極限にあたるEuler方程式の流れとの関係が問題に なるが,Euler方程式の滑らかな解はエネルギーを保存するため,上の コルモゴロフの仮定を満足しない.そのため,乱流を記述するであろう 流れはEuler方程式の滑らかでない弱解がその候補となりうる.それに対 してオンサーガーはエネルギーを保存するEuler方程式の弱解のヘルダー 指数が1/3程度になると予想している(オンサーガー予想として知られる). すなわち乱流ベクトル場を構成するためには,それよりも滑らかさのない Euler方程式の弱解を考えなければならない.このような状況に対して DuchonとRobertは,Navier-Stokes方程式やEuler方程式の弱解でエネル ギーを保存しないような流れを散逸的弱解として定義し,それが満たす べき様々な性質について議論している. 本講演の前半では,Euler方程式の滑らかな解が本来満たす保存則が, その滑らかさを失うために保存されなくなるような解の持つ性質,特に 流体運動としての側面から検討をする.次に,三次元の問題は数学的にも 物理的にも極めて難しい問題を多く含むため,後半では二次元乱流におい て,三次元と同様に指摘されている本来保存量であるエンストロフィーの 散逸をとりあげ,滑らかでないEuler方程式の解がこれを散逸するメカニ ズムについて点渦モデルを使って行った考察を紹介する. 本研究の前半部分は明治大学 名和範人教授,京都大学 松本剛教授と の共同研究に基づく. セミナー室: 京都大学 文学部東館2階 262号室 (応用解析学講座セミナー室) ●学内建替え工事のため、応用解析学講座のセミナー室は「文学東館」に移動 しています。文学部東館は、地下に中央食堂のある建物の北隣です。 ------------------------------------------------------------- セミナー連絡先: 京都大学大学院 情報学研究科 複雑系科学専攻 磯 祐介 e-mail; iso@i.kyoto-u.ac.jp