数値解析・応用解析セミナー 12月2日(木) 15:30 -- 17:00 鈴木 厚 (大阪大学 サイバーメディアセンター) ``半導体問題の有限要素近似と特異な係数行列'' <研究発表要旨> 半導体問題は静電ポテンシャル, 電子/正孔密度分布を未知変数とする ドリフト拡散方程式で記述される. 電子/正孔密度分布のドリフト項は静電 ポテンシャルの勾配との積による非線形項であるが, 拡散項とあわせて, 静電ポテンシャルを指数関数重みとして扱う楕円型方程式に帰着することが 一般的である. 電子/正孔密度分布の勾配を要素内で一定とみなす近似を 行なう Scharfetter-Gummel による有限体積法を用いた離散化が半導体 シミュレーションの標準になっている. 本講演では有限要素法による離散化を考える. 電子/正孔密度分布の 勾配と, 静電ポテンシャルの指数関数重みを乗じた Slotboom 変数を未知 変数とする混合型弱形式を用い, 密度分布の勾配を探す H(div) 空間に Raviart-Thomas 要素を用いる離散化を行う. この近似は有限体積法と 同様に Slotboom 変数が定数となる熱平衡解に整合している. 半導体問題は静電ポテンシャルの分布によっては離散化後の行列の 条件数が非常に大きくなり, また, 混合型近似から得られる係数行列は 強圧性がないため連立方程式の解法に工夫を要するが, double-dobule 型 による倍精度演算と軸選択遅延を用いる Dissection 直接法ソフトウェア により求解する. N 型半導体と P 型半導体が N-P-N の構造になるダイ オードでは P 型半導体の内部境界が絶縁に近い状態になると考えられ, 非線形問題を解く Newton 法が収束しなくなることが知られている. この 現象は Newton 法の係数行列が特異になっていることから生じ, 密度分布 の方程式で静電ポテンシャルの指数関数重みによる拡散係数が浮動小数点 表現で 0 と見做される縮退によることがわかった. 特異な係数行列の核の ベクトルは Dissection 直接法により数値的に求め, その成分の大きさは 付加的な非線形最適問題により計算できることを示す. ●セミナー室: 京都大学 総合研究12号館 2階203号 (応用解析学講座セミナー室) ●総合研究12号館はキャンパスマップでは「京都大学本部構内 54番建物」です。 ------------------------------------------------------------- セミナー連絡先: 京都大学大学院 情報学研究科 先端数理科学専攻 磯 祐介 e-mail; iso at i.kyoto-u.ac.jp